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2014年2月14日 (金)

桜玉吉『漫喫漫玉日記 深夜便』、『漫喫漫玉日記 四コマ便』の感想と、私の「桜玉吉読者歴」

 昨年(2013年)後半に、桜玉吉さんの新刊が二冊刊行されました。個人的には、「まさか新刊が出るとは」という驚きと嬉しさとで読んだ。その驚きと嬉しさについて説明するには、まず私の「桜玉吉読者歴」について書く必要があると思うので、書いておきます。

しあわせのかたち (1) (Beam comix) 桜玉吉さんは、1986年から1994年にゲーム雑誌『ファミコン通信』(のち『週刊ファミ通』)で連載した「しあわせのかたち」でまず名を知られた方。「しあわせのかたち」は、前期は様々なゲームのパロディ漫画を数回に分けて描いていた。そしてその中で、某有名ロールプレイングゲーム(「ドラゴンクエストII」がモデル)のパロディのシリーズから、「おまえ、こいつ、べるの」という三人のキャラクターが人気となり、以降は主に三人と脇を固めるキャラクターが様々なゲームのキャラクターを演じるという形式になった。いわゆる手塚治虫先生からの伝統的な、漫画における「スターシステム」だね。
 後期は、『ファミコン通信』の週刊化の頃から身辺雑記を描く日記漫画の比率が高くなる。私はたぶん、この頃の玉吉さんや登場人物に、「オタクの大人のあり方」を見た気がする。その前から、「しあわせのかたち」には特撮や音楽などの小ネタが登場していたのだけれど。

 しかし、玉吉さんが徐々に体調を崩し、「しあわせのかたち」は終了。以降は同じ出版社の月刊漫画雑誌『コミックビーム』で「漫玉日記」シリーズを連載しつつ、他にもいくつかの連載を持つ。「しあわせのかたち」時代は、フルカラーで登場人物も二等身・三等身だった(日記漫画も)。しかし「漫玉日記」シリーズでは、上手い表現ではないかもしれないが、かつての漫画雑誌『ガロ』の作家に多く見られたような絵のタッチになる。ただこれには契機となった作品があった。「しあわせのかたち」での、結構悪い思い出が多かったらしい(ということはネタになるエピソードが多かった)伊豆旅行の様子を描いた「しあわせのそねみ」。これは今までの「しあわせのかたち」とは絵も文字も(この作品はセリフなども写植でなく手書きだった)まったく異なる雰囲気で、おそらく多くのファンが衝撃を受けたはず。私も衝撃を受けたくち。しかし、ご本人はおそらくこのタッチに手応えを感じたのでしょう。終盤の「しあわせのかたち」には、この「そねみ」風の絵が徐々に登場する。そして「漫玉日記」シリーズ以降は、ほぼこのタッチに統一される。
 これはファンを選ぶことになったのかもしれないが、私はわりとすんなり移行できた記憶がある。理由を思い出すのは難しいけれど、ひとつは話の展開のさせ方やユーモアがこれまで通りだったということ。それから、自分が10代後半から20代となるに連れて、現在のタッチに慣れたということ。こうした点があったと思う。結果として、根強いファンが支持をしたという現実はある。

御緩漫玉日記 (1) (Beam comix) しかし、従来からの鬱病が重篤になったとのことで、2007年に『御緩漫玉日記』が終了。旧作の文庫化や増刷などはあったものの、新刊は出る気配がない。『ファミ通』掲載の「読もう! コミックビーム!」と『週刊アスキー』の「ゲイツちゃん」という四コマくらいが目立って目にできる連載だった。

 だから、2012年4月号の『コミックビーム』に、2011年3月11日の経験を描いた「3・11金曜日」が掲載されるということは驚きだった。私も何年かぶりに『コミックビーム』買いましたからね(インターネットで検索すると、そうした方は多かったらしい)。その後も『コミックビーム』には断続的に読み切り短編を掲載し、それが一冊にまとまったのが『漫喫漫玉日記 深夜便』として刊行された。そして、引き続き連載されていた「読もう! コミックビーム!」も『漫喫漫玉日記 四コマ便』として刊行。更に、2013年9月からは『週刊文春』には月一回、二分の一ページではありますが「日々我人間」という連載も始まっている。

 過度な期待をしてはいけないけれど、これはもう「復活」と呼んで良いと思う。

 で、ここからが新刊二冊の感想です(長いねえ。あまりに長い前置きだねえ)。

漫喫漫玉日記 深夜便 (ビームコミックス) 『漫喫漫玉日記 深夜便』は、分量も作品ごとに違うし、ネタになっている時期も時系列ではない。それでも共通しているのは、玉吉さんのギャグ漫画家としての性のようなもの。読んでいる途中はそうしたことを感じることはなくて、ただ面白い。しかし振り返ると、いかに笑い、オチに持っていくかが練られていると思う。例えば「3・11金曜日」は、東京の漫画喫茶で地震に遭遇した時の光景を描いているのだが、そこでさえも玉吉さんは本棚から落ちてくる漫画を一生懸命棚に戻したり、棚から落ちてきたパソコンを受け止めた時に急に昔のテレビの記憶(それもわりとしょうもない)が浮かんだり、する。その、当時の自分に対する客観性、そしてそれを漫画に描く覚悟は、漫画家、特にギャグ漫画家ならではだと思う。両親に映画『ゴジラ』と公開当時の時代背景について力説し、それに対するお父上のコメントがオチになる「ゴジラさん」なども良い。

漫喫漫玉日記 四コマ便 (ビームコミックス) 『漫喫漫玉日記 四コマ便』は、2009年から2013年の身辺雑記を綴った四コマ漫画。四コマ目の下に、そのネタと絡めたコメントと「読もう!コミックビーム!」の文字が入る。これだけの期間の四コマをまとめると、かつての「漫玉日記」シリーズのような雰囲気になる。そして、雑誌掲載時には一回一本の掲載なので、四コマごとに完結していて、一本ごとの密度も濃い。ドラマの主人公にもなった某大ベテラン漫画家の先生が、今年のベスト漫画を取り上げる本を真剣に立ち読みしていたとか、良い話。
 また、この作品があったから、あまり作品を描いていなかった時期の玉吉さんの様子も分かるわけで、また描かれた当時の世の中の様子も分かるわけで、その点でも貴重な作品。単行本化にあたっての、玉吉さんと『コミックビーム』奥村編集長の対談も興味深い。この作品に描かれていないことを補足するような内容になっている。

 次の作品集もすぐではなくても読いので末永く待っています。このまま不定期でも作品発表が続けば、いつかは単行本になると思うので。

*桜玉吉さんの作品の発表時期などは、下記のサイトを参考にしました。

玉吉ふぁん/桜玉吉ファンサイト:So-netブログ
http://tamakichifan.blog.so-net.ne.jp/


これまで私が書いた本の感想はこちらからどうぞ。

●木の葉燃朗の「続・本と音楽の日々」+「しゃべる帰り道ラジオ」: 書評
https://konohamoero.cocolog-nifty.com/blog/cat57961390/index.html
●TRCブックポータル 書評投稿履歴
http://www.bookportal.jp/webap/user/SchReviewerReviewList.do?reviewerId=25

●旧ブログ:タグ「書評」
http://konohamoero-archives.seesaa.net/tag/%8F%91%95%5D
●「木の葉燃朗のがらくた書斎」トップ>>木の葉燃朗のばちあたり読書録
http://konohamoero.web.fc2.com/dokusho/index.html

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