異色のインド映画:「スタンリーのお弁当箱」を見る
2013年7月13日、シネスイッチ銀座で、映画「スタンリーのお弁当箱」を見る。インドの映画ですが、スターが登場しないとか、歌と踊りが中心ではないとか、96分という上映時間(インド映画としては短い)とか、色々な部分で異色の作品のようです。最初は映画として撮影されたわけではなく、こども向けのワークショップだったとのこと。
主人公の少年スタンリーは、様々な話やアイデアで友人を楽しませる人気者。しかし、事情があってお弁当を持ってくることができない。最初は家でお昼を食べるとごまかしていたスタンリーだが、実は水道水を飲んで空腹を紛らわせていた。
そんなスタンリーを見かねた友人は、彼に少しずつお弁当を分けるのだが、それを邪魔するのが教師のヴァルマー。ヴァルマーは他の先生に昼食を分けてもらっているのだが、生徒のお弁当にも手を出すようになる。
そんなヴァルマーの目を隠れて、自分たちでお弁当を食べるスタンリーたち。しかしある日とうとう見つかり、スタンリーは「弁当を持ってこないのであれば学校にはくるな」と罵られて……。
弁当をめぐるスタンリーたちとヴァルマーのやりとりはコミカルだし(弁当に執着を見せるヴァルマーはやや極端な人物ではあるが)、スタンリーをはじめとする生徒役はみんな生き生きとしている。これは映画の役柄を演じているというよりも、こどもの様子を自然に撮影しているが故だろう。
だが、監督が実際に描きたかったのは、後半に明らかになるインドのこどもの現実だと思う。スタンリーはなぜお弁当を持ってこなかったのか。そしてある日、立派なお弁当を持ってくるのだが、それはなぜか。
そのことが明らかになると、様々な架空の話をするスタンリーの姿が違って見えてくる。ラストも、一見(事情を知らない登場人物の立場からすると)ハッピーエンドだが、実は周囲に心配させまいとするスタンリーがけなげに思えてくる。それでも懸命に前を向いて生きようとするスタンリーの姿には、希望を感じる。
映画『スタンリーのお弁当箱 http://stanley-cinema.com/
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