« 密度の濃い室内楽:探楽愉快Vol.4「100年前、北の地に伊福部昭が生れた」を聴く | トップページ | 【日記】日本手帖の会のオフ会に行ってきましたよ(2014.04.06) »

2014年4月 6日 (日)

【書評】目に見えているのと違う光景が見え隠れする物語:フィリップ・K・ディック『時は乱れて』(ハヤカワ文庫SF)

 目に見えているのと違う光景が見え隠れする物語

時は乱れて (ハヤカワ文庫SF)フィリップ・K・ディック『時は乱れて』(ハヤカワ文庫SF)

 フィリップ・K・ディックの初期の長編作品が改訳で復刊。

 最初は、1960年頃ののアメリカの一般家庭の何気ない日常が描かれる。珍しい点といえば、主人公レイグル・ガムが「火星人の出現箇所を当てよう」という新聞のクイズ企画に毎日挑戦し続けて収入を得ていること。だが彼も、その日の「仕事」が終われば同居する妹夫婦や若い隣人の夫婦と語らったり、町へ出かけたりする。

 だが、その日常には実は秘密がある。物語の核心に関わるので具体的には書けないが、後半はこの秘密を巡る物語が展開する。これは後に小説や映画などで多く使われたテーマであり、また高橋良平氏の解説によると、当時でも同様のテーマの小説やテレビドラマがあり、ディック自身の作品にも同じテーマを扱ったものがあるという。
 ということで、読んでいると途中でうすうす感づいてくる。しかしそれでも、現実がゆがむ感じ、目に見えているのと違う光景が見え隠れするのが、ディックらしくて好きです。
 そして、最後に主人公レイグルが行う「ある決断」とその理由には、意外性があってよかった。ディックの小説としては、最後のまとまりもいいので(ただ、まとまり切らないのもまたディックの魅力と、私は思っている)、広くおすすめできる小説。


これまで私が書いた本の感想はこちらからどうぞ。

●木の葉燃朗の「続・本と音楽の日々」+「しゃべる帰り道ラジオ」: 書評
https://konohamoero.cocolog-nifty.com/blog/cat57961390/index.html
●TRCブックポータル 書評投稿履歴
http://www.bookportal.jp/webap/user/SchReviewerReviewList.do?reviewerId=25

●旧ブログ:タグ「書評」
http://konohamoero-archives.seesaa.net/tag/%8F%91%95%5D
●「木の葉燃朗のがらくた書斎」トップ>>木の葉燃朗のばちあたり読書録
http://konohamoero.web.fc2.com/dokusho/index.html

| |

« 密度の濃い室内楽:探楽愉快Vol.4「100年前、北の地に伊福部昭が生れた」を聴く | トップページ | 【日記】日本手帖の会のオフ会に行ってきましたよ(2014.04.06) »

書評」カテゴリの記事