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2014年5月11日 (日)

ラ・フォル・ジュルネ:5月5日(月・祝)感想 #lfj #lfjtokyo _

 ゴールデンウィークに行われたクラシックの音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」。東京は5月3日(土・祝)~5日(月・祝)開催です。5月5日に聴いたコンサートの感想を簡単に(後日加筆修正し、写真なども追加してwebサイトに掲載予定です)。

・ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」2014 「10回記念 祝祭の日 Jours de F?tes」
http://www.lfj.jp/lfj_2014/

 現地からつぶやいた感想などをまとめたページも作りました。

「ラ・フォル・ジュルネ」2014年私的まとめ #lfj #lfjtokyo _ - Togetterまとめ :
http://togetter.com/li/660407

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今朝の好田タクトさんはバイオリンの早川きょーじゅとのパフォーマンス

 バイオリンとの掛け合いだと、昨日までとはまた違ったネタも。指揮者によるベートーヴェン「運命」の違いとか(パフォーマンス中に近くのモニターの映像で「運命」が流れるという奇跡的な出来事も)、早川きょーじゅのおしゃりバイオリンとか。
 しかし、9:30からの公演があり、泣く泣く途中でホールAに向かう。

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311 ホールA 9:30-10:15
“0歳からのコンサート”
ムジカーシュ
中村萌子(司会)
 ハンガリーの民族音楽や舞曲など

 意外なほど客席が空いてしまった。ムジカーシュ、こどもにはぴったりの演奏だと思うのですが、親御さんがご存じないので敬遠してしまったのかしら。0歳からのコンサートには向いている公演なのだけれど。
 演奏は非常に楽しかった。会場での手拍子あり、踊り出すこどもも。偉いのは、大人もこどももほとんど初めて聴く曲でも、みんなちゃんとリズムを取って手拍子をするところ。人間、リズム感って、持って生まれているのかもしれないです。
 ただ、もっと自由な感じでも良かったかなと思う。もちろん運営する側にとってはそうは行かないでしょうが、このくらいの人数なら、踊りたい子に前の方とか通路で踊ってもらっても良かったのかもと。というか、やはりムジカーシュは地上広場のようなオープンスペースでの演奏が似合うように思います。あとは、他の公演で聞くことができた、メンバー自身による日本語での(事前に準備したメモを読んでいるのですが)楽器や曲の紹介もあっても良かったかも。

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312 ホールA 11:45-12:30
ボリス・ベレゾフスキー(ピアノ)
シンフォニア・ヴァルソヴィア
ジャン=ジャック・カントロフ(指揮)
 バーバー:弦楽のためのアダージョ op.11
 チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 op.23

 ベレゾフスキーさんはほぼ毎年来日していて、ソロでも、室内楽でも、オーケストラとの協奏曲でも、様々な形で演奏してくれている。今回はチャイコフスキーのピアノ協奏曲。
 印象としては、オーケストラの技術や表現力と、ベレゾフスキーの技術・表現力がそれぞれ発揮される。といっても調和していないのではなくて、両方の力がひとつの曲を作っている。

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332 ホールB5 13:30-13:55
ヴォックス・クラマンティス
 ヤーン=エイク・トゥルヴェ(指揮)
 ケージ:18の春のすてきな未亡人
 ラング:墓地よ
 グレゴリオ聖歌:昇階曲
 ラング:イブニング・モーニング・デイ
 ケージ:花
 ラング:再び
 グレゴリオ聖歌:アレルヤ
 ラング:アイ・ウォント・トゥー・リブ
 ラング:愛は強いから

 ヴォックス・クラマンティスが、ケージとラングという、現代アメリカ作曲家の合唱曲の間に、グレゴリオ聖歌を歌う。
 最初から、メンバーがステージだけでなく会場内(客席の隣の通路など)に立ったので、「これはちょっと変わった演奏になりそう」と思う。そして、メンバーの1人が壁やピアノの外側をたたき、それとともに合唱が始まる。
 ケージにラングというと、もっと難解なイメージがあったけれど、ハーモニーが美しい曲が続く。

 アンコールにはアルヴォ・ペルトの曲を一曲。

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昼は久々に屋台村

 3日、4日と会場からちょっと歩いたビルや飲食店での昼食だったので、この日は屋台村で食べることにする。今年は、去年や一昨年の印象からすると、地上広場も地下の展示ホールも、東京国際フォーラムの人の数は程良い感じ。かと言ってホールがガラガラだったわけではなく、チケットの販売率は90%を超えたらしい。おそらく、会場によみうり大手町ホール(約500席)が追加になったことで人の流れが分散されたことが影響しているのではないか。地上広場については、ちゃんとラ・フォル・ジュルネに来た人の休憩の場になっているかなと思う。以前は、音楽祭は全然知らないけれど、座席を占拠してビアガーデン代わりに使っている団体も見ました。

 そんなことを考えながら、屋台村で色々買って食べる。

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 屋台村で買って食べる。

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 屋台村で買って(食べ過ぎだ)。

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364 G409 15:15-16:00
福川伸陽(ホルン)
三浦友理枝(ピアノ)
 ガーシュウィン(福川編):ピアノ協奏曲ヘ調より 第2楽章
 フランセ:ディベルティメント
 ラヴェル(福川&三浦編):亡き王女のためのパヴァーヌ
 バーンスタイン:エレジー
 ガーシュウィン(福川編):ラプソディ・イン・ブルー

 ホルンとピアノのデュオによる公演。
 最初にガーシュウィンのピアノ協奏曲があって、続いてのフランセ「ディベルメント」と明るい曲が続き、その後はラヴェルとバーンスタインの鎮魂の曲。
 そして福川氏がホルンとピアノのために編曲した「ラプソディ・イン・ブルー」。たしかにこの曲のエッセンスは管楽器(ホルン)とピアノで表現できそうだと想像はできる。しかし二つの楽器だけでここまで「ラプソディ・イン・ブルー」の世界をつくるのは、ふたりの編曲力(楽譜は三浦さんも校訂しているとのこと)であり演奏力だろう。

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325 ホールB7 17:45-18:30
横浜シンフォニエッタ
鈴木優人(指揮)
 ベートーヴェン:序曲「レオノーレ」第3番 op.72b
 シューベルト:交響曲第7(8)番 ロ短調 D759 「未完成」

 今年二回目の、鈴木優人さん指揮・横浜シンフォニエッタ。シューベルトの未完成は、チェロの低音の思い感じが効いている一方で、繰り返し流れるメロディーは軽やかで、メリハリがはっきりしたシューベルト。ベートーベンの序曲「レオノーレ」第3番も力強い。
 日本の若いオーケストラも、研鑽を積んで素晴らしい演奏をしていることが分かる。今よりも更に注目されて良いと思う。

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315 ホールA 18:45-19:30
アレクサンドル・クニャーゼフ (チェロ)
ウラル・フィルハーモニー管弦楽団
ドミトリー・リス (指揮)
 ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 op.104

 当日でチケット買って、ウラル・フィル、アレクサンドル・クニャーゼフのドヴォルザーク・チェロ協奏曲。クニャーゼフさんは堂々たる体躯といい、演奏技術といい、楽器は違えどボリス・ベレゾフスキーさんを連想する存在感。ただ、ベレゾフスキーは難しい曲をそうと感じさせないような弾き方をするすごさがあるけれど、クニャーゼフのチェロは熱気が伝わるようなすごさがある。

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316 ホールA 20:45-21:30
萩原麻未(ピアノ)
ルセロ・テナ(カスタネット)
シンフォニア・ヴァルソヴィア
ジャン=ジャック・カントロフ(指揮)
 ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
 ラヴェル:ボレロ
 ビベス:《ドニャ・フランシスキータ》より ファンダンゴ
 ヒメネス:《ルイス・アロンソの結婚式》より 間奏曲(カスタネットとオーケストラのための)

 ホールA最終公演。私は何年か前から、毎年最後はホールA最終公演を聴こうと思っていて、今年も真っ先にチケットを買う。たくさんの人と最後の時間を分かち合いたいので。
 最初は萩原麻未さんがソリストのラヴェルの「ピアノ協奏曲」。萩原さん、若き実力者として名前や評判は聞いていたけれど、実際に演奏を聴くと、やはりすごい。Aホールはステージ横の大きなモニタにステージの様子が映って、演奏する手元の様子が見えるので、その指の動きがよく分かる。演奏中の表情は真剣そのものですが、楽章の間や演奏後に見えた笑顔からは、良い意味での精神的余裕があるのかなと。

 続いてオーケストラ(シンフォニア・ヴァルソヴィア)のみで「ボレロ」。「ボレロ」はラ・フォル・ジュルネでも何度か聴いている。曲の長さとか、分かりやすい盛り上がり方とか、プログラムに含めやすいのでしょう。ソロパートも多いので、オーケストラの実力もアピールしやすいのかもしれません。しかし、同じメロディーの繰り返しなのに、これだけ盛り上がるというのは、つくづく不思議な曲です。ラヴェルはパロディーというか、エスプリ(皮肉)を効かせる意図もあってつくったとどこかで読んだ記憶もありますが。

 ここまででも素晴らしかったのですが、最後はカスタネットの女王ルセロ・テナさんが登場。2曲ともオーケストラとの協奏ですが、どちらもオーケストラに負けない存在感。両手のカスタネットという楽器だけで。というか、私はテナさんを通じて、カスタネット独奏の曲の豊富さを感じている。
 当然のごとくアンコールが起こり、オーケストラとファリャ「はかない人生」から。そこでスタンディング・オベーション。オーケストラが退場しても拍手は鳴り止まず。ソロでカスタネット演奏を披露したり、ルネ・マルタンさん(音楽祭のディレクター)、梶本社長(音楽祭のプロデューサー)もステージに呼んでのあいさつ。最後には再び1人で、カスタネットを使っての寸劇(というか、コント)まで。このサービスっぷりと、パワー。おそらく、テナさんはラ・フォル・ジュルネで初めて「アイドル」と呼びたい存在だろう。この音楽祭で伝説的な名演を聴かせてくれた演奏家は数多くいるけれど、アイドルと呼びたい(呼んでも失礼にならない)のはこの方だけだと思う。あいさつの中で、「future」、「again」と言っていたけれど(マイクはなかったけれど、これは聞き取れた)、ぜひまた日本に来て演奏して欲しい。

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 ということで、今年もラ・フォル・ジュルネの全公演が終了。毎年名残惜しくて会場内をうろうろする。地下の展示ホールは、八角形のステージを残して各ブースは撤収完了。その様子を写真に撮りながら駅の方に向かっていると、俳優の辰巳琢郎さんが歩いているのを見かける。おそらく、出演者、関係者の参加するアフターパーティーに出席されるのでしょう。辰巳さん、前夜祭のレセプションで司会を務められていたので。
 そして、同じ方向に向かわれるグループが。「出演者の方かな」と思ってすれ違うと、なんとKAJIMOTOの梶本社長でした。そしてその後ろに、なんとルネ・マルタンさんも。思わず「マルタンさん、お疲れさまでした。今年もありがとうございました」と声をかけてしまう。そしてマルタンさんと握手。マルタンさん、会期中は各会場を飛び回っているようで、突然お客さんと同じ場所を移動していたりするのですが、まさかここでお会いできるとは。なんだか不思議な気分だし、かつ、感動しました。

 という感じで、今年もありがとうラ・フォル・ジュルネ。

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