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2014年5月19日 (月)

【書評】笑えて泣けて、想像以上の素晴らしさ:NAXOS JAPAN(原作)・IKE(画)『運命と呼ばないで: ベートーヴェン4コマ劇場』

笑えて泣けて、想像以上の素晴らしさ

運命と呼ばないで: ベートーヴェン4コマ劇場NAXOS JAPAN(原作)・IKE(画)『運命と呼ばないで: ベートーヴェン4コマ劇場』(学研パブリッシング)

 ベートーヴェンを題材とした四コママンガ。ベートーヴェンの弟子であったフェルナンド・リースを語り手として、同時期に弟子として学んでいたツェルニー(今はピアノの練習曲でも知られていますね)やベートーヴェンの友人でヴァイオリニストのシュパンツィヒなど、同時代の音楽家を描いている。
 四コママンガなので、内容はコミカル。しかし、リースがフランツ・ヴェーゲラー(ベートーヴェンの友人の医師)と著した『ベートーヴェンに関する伝記的覚書』他の史料を元に、クラシック音楽レーベルのNAXOS JAPANが原作(ストーリー)を創っているので、史実に基づいた本格的な内容。一方で、ベートーヴェンがダジャレを飛ばしたりギロチンチョップで突っ込んだり、マンガとしてのギャグや誇張もある。この、柔らかさと堅さのバランスが絶妙。

 ベートーヴェンの伝記は、一般向けのものからこども向けのものまで多く書かれていて、漫画で描かれているものもある。私も小学生の頃に活字の伝記を読んだ記憶がある。しかしこのマンガで描かれるベートーヴェンは、いわゆる「偉人」とは違っていて、もっと人間味がある。宮廷音楽家(貴族に仕える専属の音楽家)という職業がなくなっていった時代に、どうやって音楽家として生活していくか。弟子を育てる教育者としての側面。耳に障害が生じ始めた中で未来をどう考えていたのか。そうしたことが、笑いの中に見え隠れする。

 前半はひたすら楽しいのだけれど、後半は感動する。リースが、ツェルニーが、どのようにベートーヴェンの元を巣立ち、それぞれどんな道を歩んだか。そしてベートーヴェンの交響曲第九番が生まれるきっかけとなった、リースの師への変わらぬ敬意。そうした様々な思いが表われる最終章とカーテンコールは、読んでいると泣く。第九の第四楽章などを聴きながらだと、その感動もひとしお。

 事前の想像では、もっとゆるゆるした感じのギャグマンガだと思っていたのですが(私はNAXOS JAPANのwebサイトでの連載は読んでいなかった)、予想以上の素晴らしさでした。

NAXOS JAPAN | ベートーヴェン4コマ劇場「運命と呼ばないで」
http://naxos.jp/special/no_unmei

 なお、このマンガの公式サウンドトラックも、配信されている。作中に登場する曲が収録されて、50曲入りで1,200円。一部の楽章のみの曲もあるとはいえ、このボリュームはさすがNAXOS JAPAN。マンガに興味がある人はもちろん、ベートーヴェンやリースの曲を聴きたい人にもおすすめ。ちなみにサウンドトラックの題名は『ズンドコマーチ頂上決戦』。この題名のセンスも、さすが『交響戦艦ショスタコーヴィチ』や『魔法少女プロコフィエフ』などのコンピレーションをリリースしてきたNAXOS JAPAN。ちなみに「ズンドコマーチ」がなにかってことは、マンガを読むと分かるよ。

 あとは、私にとって未知の音楽家だったフェルナンド・リースに、やはり興味がわく。リースの作品もNAXOS JAPANからリリースされているので、これも聴いてみたい。

運命と呼ばないで - ベートーヴェン4コマ劇場 公式サウンドトラック「ズンドコマーチ頂上決戦」『運命と呼ばないで - ベートーヴェン4コマ劇場 公式サウンドトラック「ズンドコマーチ頂上決戦」』(NAXOS JAPAN)

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