ポップで絶望的な世界で見る夢は:映画「ゼロの未来」(テリー・ギリアム監督)を見る
テリー・ギリアム監督の「ゼロの未来」を見る。結論をやや挑発的に書いてしまうと、「(褒め言葉として)最高に訳が分からなくて、最高に面白い映画」だった。
舞台は、おそらく今よりも未来であろう世界。ただ、今のどんな国とも違った雰囲気を持っている。言葉は英語だけれど、街並にはアジア的な猥雑なエネルギーを感じる。
主人公、コーエンは、データ解析の仕事に携わる。仕事ぶりは優秀だが、本人は自宅での勤務を希望する。なぜか? かかってくる電話を待っているから。その電話こそが、自分の救いになると信じている。
そうした話をエージェントに直訴したコーエンは、自宅で「ゼロの秘密」を解析することになる。しかし、仕事は困難、電話は来ない。精神的におかしくなり始めたコーエンの元にヘルプに来る人々。コーエンはどうなるのか、そして「ゼロの秘密」とは?
最初に書いたように、世界も物語も混沌としていて訳がわからない。だが、それがいいのです。コーエンたちが仕事に使う端末がゲーム機みたいだったり(それも1990年代くらいの!)、街中が電子広告まみれだったり、数々のガジェットが彩るポップで悪夢のような世界。これは今の現実とも重なる部分がある。一方、コーエンが住むのが外の喧騒とは隔絶されたような元教会だったり、街の中にも穏やかな場所があったりするのが対照的。
そして、コーエンを助ける人たちも、クセはあるが憎めない。エージェントの息子の天才プログラマー・ボブや、電脳空間の風俗嬢のようなベインズリーや。キャラクターは際立っているのだが、徐々に好感が持てる。
ラストは、ちょっと見る人によって解釈が分かれるように思った。コーエンは幸せなのかもしれないし、現実から違う世界に行ってしまったのかもしれない。だがこの映画には、あまりすっきりするまとめ方は似合わない気もするし、これで良かったのかなと思う。そういう意味で、フィリップ・K・ディックの小説と通ずるものがあると感じた。
映画『ゼロの未来』公式サイト : http://www.zeronomirai.com/
映画のレビューは、今は「Yahoo!映画」にも投稿しています。
http://movies.yahoo.co.jp/my/review/profile-cu90bpKdeiCFZ1YpgYAN4Q--/
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