【感想】音楽を聴く感動「Music Program TOKYO 小曽根真 “Jazz meets Classic”」(2020-07-25・東京文化会館)
Music Program TOKYO
小曽根真 “Jazz meets Classic”
出演
ピアノ:小曽根真
指揮:太田弦
新日本フィルハーモニー交響楽団
曲目
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K488
小曽根真:ピアノ協奏曲「もがみ」
https://www.t-bunka.jp/stage/4767/
※前半・後半ともアンコール曲あり。曲名詳細は後日公開されるため、公開されたら追記します。
元々、オーケストラ、指揮者、演目とも異なる公演だった。小曽根真さんがピアノを演奏することと、小曽根さん作曲のピアノ協奏曲「もがみ」を演奏することは従来通り。
クラシックのコンサートは本当に久しぶりで、去年のラ・フォル・ジュルネ以来かもしれない。だから、オーケストラのチューニングを聴いたり、指揮者とソリストの入場にあわせて拍手をしたり、ひとつひとつが新鮮。
これまであまり意識したことはなかったけれど、モーツァルトの作品は憂鬱を和らげるというか、憂さを晴らすというか、そんな効果があるんじゃないかと、ピアノ協奏曲23番を聴きながら思った。
第一楽章にカデンツァ(即興演奏)があるのだけれど、そこが一気にジャズになるのが、やっぱりおもしろい。
ピアノ協奏曲「もがみ」は、山形県を流れる最上川をモチーフにしている。2003年10月の『第18回国民文化祭・やまがた2003』のために、井上ひさしから依頼を受けて作曲した曲とのこと。最後の小曽根さんのあいさつによると、2000年に依頼を受けて、ジャズしか分からないので無理だと答えたのだけれど、「3年あるからできる」と言われて勉強して作曲して、小曽根さんがクラシックの分野にも関わるきっかけになった作品とのこと。
今回は初演版を改訂した版で、その初演。
山形県の民謡とジャズという、別のジャンルの音楽が行き来するのが、小曽根さんの作品らしいと思った。特に第一楽章が印象的。
そして全体に感じるのは、「生命力」。人間も生きて生活しているし、自然も生きている。その生命力がぶつかり合うような迫力があった。
第三楽章では、本来合唱があるのですが、現在の情勢もあって、この部分はハモンドオルガンで演奏された。そのオルガンは、小曽根さんのご尊父でピアニスト・オルガン奏者の小曽根実さんが生前使用していたものとのこと。オルガンの音色は、合唱とはまた異なる雰囲気があって、合唱も聴いてみたかったけれど、これもまた貴重だった。
小曽根さんのあいさつからは、小曽根さん自身の演奏ができる喜びと感動を感じた。元々3月29日に山形で山形交響楽団と「もがみ」の改訂版初演を予定していた。しかしこれは延期になってしまい、今日も延期の連絡が来るのではないかと心配していたが、開催ができた。袖からステージに出て、客席を見て胸がいっぱいになったとのこと。小曽根さんくらいの世界的な演奏家であっても、人前での演奏の機会がない不安とか、そういったものはあるのだなあ。それだけに、オーケストラ、客席、あらゆる人への感謝を伝えていたのが印象的だった。
これから、オーケストラやクラシックのコンサートがどういう形になるのかは分からない。現状、管楽器の演奏はできるけれど、歌曲や合唱はまだまだ難しそうだし、オーケストラの人数も絞っての演奏になっている。観客も、入場時にサーモグラフィで検温があったり、チケットは自分で切ったり、パンフレットは自分で取ったり、なにより客席が市松模様のように座ったり、これまでとはだいぶ異なる。
それでも音楽を聴く感動はあるのだし、文化ってどこかの誰かが残してくれるものではなく、自分たちで残していくものなんだと思う。演奏の最後に「ブラボー」と叫べないので、「ブラボー」と書いた紙を掲げる人もいたりして、そういうのを見ると、工夫っていくらでもできるもので、人間っていい意味でしぶといのだと思う。
(参考)変更前の出演者と曲目。のちのちの記録用に。
出演
ピアノ:小曽根真
指揮:アラン・ギルバート
ソプラノ:上田純子/ソプラノ:澤江衣里/メゾソプラノ:高橋華子/テノール:小堀勇介/テノール:工藤和真/バリトン:岡昭宏/合唱:国立音楽大学合唱団
管弦楽:東京都交響楽団
曲目
ベートーヴェン:ピアノ、合唱と管弦楽のための幻想曲(合唱幻想曲)op.80
小曽根真:ピアノ協奏曲「もがみ」
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